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風の匂い / 徳田千夏

ガーデン写真:5月の光

 ガーデンは刻一刻と変化する時間をとらえやすい空間のはずなのに、最も普遍で悠久なものの一つを感じる・・その不思議な感覚が大好きです。

ガーデン写真:5月の光

 香りに誘われて辿るその先に待っているのは、きっと次の季節への入り口だと思います。

ガーデン写真:5月の光

 皆さんの秋の扉が、晴れやかな空に続いていますように!

この夏は、呼吸をすることさえ息苦しく感じた暑さでした。文字通りの炎天下。一本の街路樹もない道を目の前にして、歩いて行こうと思う気持ちそのものが萎えてしまったり。街路樹を辿りながらの道であっても、路面の照り返しを受けながらポツンポツンと乾き切る樹木の様子を見て辛くなり、もういいから、この街路樹を別の所へ移してあげて・・!と心を痛めたり。あらゆる意味でクラクラしどおしの夏でした。

気象のもたらす災害も、次々に史上初めての記録が報告されました。気づかぬうちにかなり疲れがたまっている夏だと思います。どうぞ皆様、引き続きくれぐれもご自愛ください。

そんな酷暑も、20日を過ぎた頃でしょうか。 まるで
まとわりつく様だった空気が、一変した朝がありました。まだ温度計がさす数字は同じでしたが、暑い空気に微かに混ざる或る風の匂いがありました。 肌が感じたその匂いは、「もう少し・・!やっと来た・・!」といった安心と、そんなゆとりの出来た心に、新たに奮い立つ 気持ちを起こさせてくれました。

風の匂いは、折々、様々な感情や想いを運んでくれます。それは、辛かったり甘かったり哀しかったり。自分だけのものだったり。誰かと共通だったり。人によっては、それが色だったり味だったり場所だったり・・その違いを想像するのも楽しいです。 それらの感覚と結びついた感情は、喜怒哀楽の妙を醸しながらこれから向かう季節へと繋がってゆくのだと思います。

ガーデンを考える時、そうした総てのことが常に想いの根底にあります。実際には、植生は当然ながら、通年の変化のなかのバランスを総合的に考察しなくてはなりません。ただ、それらの細々としたことの行き着く先は、やはり、明日も会いたいと励まされる匂いが漂う、植物と人間が共に元気に息づく空間に続いているように思います。

2013年。とても過酷な夏でした。皆さんに届く秋の風が、穏やかで、明日の元気に繋がるものでありますように。

 


徳田千夏  (社)日本ガーデン・コンダクター協会 顧問

英国チェルシーフィジックガーデン ガーデン設計卒。現役ガーデンデザイナーとして
現場施工や植栽・メンテナンス現場に立つ傍ら「ガーデニングの本質にたった設計」を
鳥瞰する講演や執筆活動を続け、多くの後進指導・現場プロのサポートを務める。
植物と構造物、さらに人間とのバランスを活かし、実際の現場調査やインタビュー、
方法のポイント、図面化する技術・プレゼンテーションまで丁寧に紹介。

 編集長コラム  今月の~ingな人

風の声を聞く

「お盆の花火大会が終わると、とたんに秋風が吹くようになるのよ。その年の夏が、どんなに暑かったとしても。今年もそう。季節はちゃんとめぐっているのね」。 田舎に暮らす義母の言葉です。

むせかえるほど濃厚な緑の香りを運んできた夏の風は、もう高い空の向こうに行ってしまいました。今吹いてくるのは、稲田を渡ってくる秋の風。実りの季節らしく芳醇な香りがします。

それにしても風は気まぐれ。そよそよと吹いていたかと思うと、一転にわかにかき曇り、風神と雷神が空で大暴れ。エネルギーをためて、台風になって襲いかかってくることもあります。ついにこの夏は、竜巻まで発生してしまいました。「現場では、風のにおいや温度、湿り気に敏感でいなければなりません。その変化をいち早く察知して、危険にさらされる前に素早く撤収することも大切です」。竜巻の映像を見ながら、ガーデン・コンダクターの授業で、徳田先生が話されていたことを思い出しました。

ガーデンの基本3要素は、「光」「水」「風」であると、授業では繰り返し習いました。どの方角から風が吹いてくるのか、どのくらい強い風が吹くのか、または風が通らないのか。風によって気温も乾燥の度合いも変わってくること、植物が受ける影響も違ってくること。あるいは、台風は海水を巻き上げているので、その風雨を受けた樹木は塩水でもまれたようになること…etc。

風といえば、通しがいいか悪いか、くらいしか考えたことがなかった私には、目から鱗の話がたくさん出てきました。それ以来、まるで風見鶏のようにきょろきょろと風向きを調べてしまうようになりました。ガーデンの「3要素」を正確に判断できるまでの読解力は、まだまだありませんが。「前例のない」が枕詞につく最近の気象状況には、誰もが不安を感じていることでしょう。風の声を聞く力は、ますます求められてくると思います。

 稲刈りまであと少し。凶暴な風によって、収穫前の作物がダメージを受けないよう祈っています。

編集長/奈良貴子
フリーライター、ガーデン・コンダクター インターメディテイト修了

ガーデン仲間によるリレーエッセイ We love Garden

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