日本ガーデン・コンダクター協会では、様々なガーデンの講座を開催しています!

音楽、ガーデン・・・重ねてきて今想うこと
/ 池原敏子

フラワーアレンジメント

 花火のような花をつけるアガパンサス。

6月の中旬頃のことでした。毎朝、3歳になる娘が目ヤニ・鼻水に悩まされていたので、もうすぐ幼稚園の水遊びが始まるということもあり、近所の小児科へ連れてゆくことにしました。その日は雨。ただ、当の本人は毎朝困った症状があるほかは至って元気で、傘を被り、レインコートに長靴を履いて、思わず「どこに行くと思ってるの?」と聞きたくなるくらい嬉しそうな様子です。そうして雨の中を診療所へ向かう道すがら、私たちは、ニョキニョキと長い花 茎を伸ばしたまだ固い蕾のアガパンサスに出会いました。

「おかあさーん、なにかミがついてるよー」という娘に、「これは蕾。パカッと割れて沢山のお花が出てきて花火みたいになるよ」と言うと、娘はしばらく不思議そうにアガパンサスの蕾のかたまりを覗きこんでいました。その様子を少し離れてみてみると、娘が、自分と同じくらいの背丈のアガパンサスとお喋りをしているようで、思わずクスッと笑ってしまいました。

今、子育てをしながら、ガーデンデザイナーになりたくて勉強を続けている私は 、その昔、関西の大学でピアノを専攻し、卒業後はピアノの講師をしたり、声楽や器楽の伴奏をしたりして暮らしていました。

大学に入ってピアノのレッスンをしていただけることになった先生はラッキーにもスイス人でした。でも当時、日本式(?)のレッスンを受けてきた私はラッキーとは思えず、カルチャーショックを受け、暫くは悩める日々でした。それまでは、どう弾けば効果的に上手く弾くことが出来るか、だったような気がします。でもその 先生のレッスンの基本は、まずはピアノの構造を知った上でのピアノの響かせ方。次は楽譜をよく読む。そして音をよく聴き、自分の出した音に責任を持つ!!!でした。元々、私は音大生にしては小さな手で、派手な演奏が出来るタイプでは なかったので(ちょっと言いわけ)この一見地味なレッスンが次第にフィットしてくるようになりました。これを丁寧にご指導いただけたお蔭で、伴奏やアンサンブルをする時の相手の呼吸や、全体としてのハーモニーを聴き自分がどのような音を出せばバランスが良いか、ということが意識出来るようになったと思っています。

そして卒業後も勉強していく中で、これってスゴイ!!と思ったことが、「拍を守り感じる事が出来れば、自由になれる」と、ある先生がおっしゃったことです。拍とは、一定の時間で区切られた枠のようなもので、タンタンタンと簡単に刻む事も出来ますが、実は奥深く、様々な重さや意味を持っています。その時はどうしても上手く弾けない所があって、弾き難い!と思えば思うほど焦ってばかりで・・・。そんな時に頂いたお 言葉です。ここ難しい!なんとかここに納めなきゃ!!と必死になるあまり、その前後、そして全体を考えることがどこかへ飛んでいってしまっていたのです。その後テクニック的な練習ももちろん必要でしたが、ちょっと立ち止まって、曲全体の把握、その曲中にあるその拍の意味を感じ 直した時、不思議とその拍がゆったりと感じられ、難しいと思っていた音符達が納まったのです。本当に貴重なお言葉をいただいたと思っています。

フラワーアレンジメント

 クネクネと曲がる道。悩みながら、そして、色々な方に刺激を受け、たくさんの事を教えていただきながら歩んできました。
(イギリス Sissinghurst
Castle Garden にて撮影)

そして今、ガーデンの勉強をしていく中で、音楽もガーデンも使う用語が違うだけで、向かう所は同じなんだと実感しています。もっと広げれば、音楽、ガーデンだけではなく、社会全体にも通じるのではないでしょうか。先にご紹介させていただいたある先生のお言葉の「拍」を、「命を守るルール」と置き換えると、またたくさんの事が見えてくるように感じます。たくさんの命がハーモニーを奏でるガーデン。それを求める命、そこに集う命。またまた、勉強することが増えてきました。

そろそろアガパンサスのお花も終焉に向かい、ますます木々の緑が濃くなって厳しい夏に備えているようです。そして娘の肌も小麦色に。夏本番です!!!皆様、日焼けや脱水に気を付けられて、お体を大切に夏を乗り切って下さい。

 


池原敏子

武庫川女子大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒。
2006年結婚を機に横浜へ移り住み、専業主婦に。
2007年秋よりガーデンの勉強を始める。

 編集長コラム  今月の~ingな人

師匠は言うのです、「〝音楽〟をやろうよ」と

今月の~ingな人、池原さんはミュージシャン。音楽もガーデンもハーモニーを奏でている、というお話には、「そうだ、その通りだ!」と、思わず叫んでしまいました。何を隠そう私もミュージシャンです。池原さんとジャンルは違いますが。

10代から今に至るまでン十年、ずっとドラムを叩いています。ブルースを ルーツに持つロックと、ファンクと、民族音楽が好きです。たどっていけば アフリカ大陸にたどりつく、大地のリズムを感じられる音楽が好きなのです。

目指すのは「すごいドラマー」ではなく、「いいドラマー」。音がデカくて手数が多く、派手で他のプレイヤーを圧倒するドラマーに憧れる人は多いけれど、私は演奏がシンプルで見た目も地味でいい。 それよりも、バンドのメンバーから「リズムが気持ちよくて、ギターソロがどんどん弾けちゃうんだ」とか「あなたが叩いていると安心して歌える」 とか言われるようなドラマーになりたい。

私が師事するドラムの師匠が、まさにそんな人。名声を気にする様子もなく、ひたすら「Love music!」な人。誰よりも楽しそうに演奏し、人の心を動かす「音楽」を奏でるのです。

彼がいつもレッスンで言うのは、「〝音楽〟をやりなさい」ということ。私のようなアマチュアプレイヤーは、一緒に演奏するプレイヤーの音を聞いているようで、実はちっとも聞いていない。とくに好きなバンドの曲をコピーする時は、練習のために聞き込んだ元の音源を頭の中で流してしまい、それに合わせて演奏してしまう。言い換えれば、目の前にいる仲間の音や呼吸を無視していることになる。そんなバンドは、個々のプレイヤーがテクニシャンであっても、出てくる音はバラバラで、バランスが悪いのです。

「それじゃ〝音楽〟とは言えないよ」と師匠は言います。 「もっともっとギターやベースの音を聞いて。呼吸と気持ちを合わせなきゃ。それがアンサンブルでしょ」。師匠に言われるまま、ギター、ベースと私の3人で、お互いの音を聞いて聞いて…聞いて演奏した時、ふっと力が抜けて、とても心地よいグルーブが生まれたのです。ああ、これだ! 胸が震える体験でした。

池原さんの言うように「音楽」は「ガーデン」に置き換えられると思います。相手の声をとことん聞いて、それに応えることで心地よい「場」が生まれるのです。そんなガーデンが奏でる曲を指揮する人=ガーデン・コンダクターとは何なのか、演奏を通じて少しずつわかってきたような気がします。

 これぞ草木が奏でるオーケストラ。壮大で重厚なメロディーが聞こえてくる気がしませんか?(イギリス Hever Castle & Gardensにて撮影)

編集長/奈良貴子
フリーライター、ガーデン・コンダクター インターメディテイト修了

ガーデン仲間によるリレーエッセイ We love Garden

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