日本ガーデン・コンダクター協会では、様々なガーデンの講座を開催しています!

自分を見つめてみて分かったこと
/ 生田洋子

フラワーアレンジメント
(写真とキャプション提供全て :徳田千夏)

 生田さんのフラワーアレンジメントです。

素敵なガーデナー

 私のイメージする生田さんです。 太陽の光を内から放つような、素敵なガーデナーです。

ガーデンの卵

 ガーデナーの卵は、ますます進化をしてゆきます!

私は、今やっと「~ing」していけるような気持ちに溢れています。 子どもの頃や若い頃、私はほとんどと言っていいほど、植物に無関心な人間でした。ずいぶん時代を遡りますが、私のルーツである両親の話からさせていただきます。

父母は明治の終わり頃の生まれで、父は農学校を出ていて、養蚕指導員の仕事をしていました。養蚕農家を回ってカイコを育てる指導をする仕事です。その後結婚して町に出て、生活のために慣れない商売をしながら、戦争も乗り越え、母と共に5女2男を育てました。

そして借家の回りにささやかながら、オシロイバナや、朝顔、小菊、百日草などを育てていました。イチジクやザクロの木もあり、食べきれないほどの収穫があったのに…。でも、でも、残念なことに私はイチジクが大嫌いだったのです。そんな両親の子なのに、私は、父母が熱心に、楽しそうに植物の世話をしているのを、ただただ、ぼーっとみているだけでした。

こんな私が最初に植物に興味を持ったのは、19歳の時。当時付き合っていた同い年の彼が、もうすぐ転勤で大阪に行ってしまうという早春の夕方。二人で歩いていて、ふと立ち寄った公園でのこと。夕暮れの中、甘くて胸がキュンとなるようなよい香りがしてくるのです。

これは何? 何の植物なの?と思ったのが始まりでした。 

2年後、その恋が失恋に終わったことで、余計にその香りが記憶に残りました。「何、何、この香りは?」と、気になっていたその香りの主の植物を探し出し、やっとジンチョウゲという植物だとわかった時、とても嬉しかったのを昨日のことのように憶えています。

やがて結婚し、子どもが8歳と6歳になった頃、彼女達が道ばたで摘んでプレゼントしてくれる雑草をすてきに活けてみたい……と。近くの商店街に新しくできた花屋さんのアレンジメント教室に入ったのが30年前。そして、その花屋さんでアルバイトをすることになり、29年も勤めさせていただきました。何よりよかったのは、仕事を通じて植物が大好きになったことです。

また10年前、徳田先生の講座で学ぶことができますます植物とガーデンの魅力に取りつかれていきました。現在はガーデナーの卵として働いています。ちょっと遅咲きのガーデナーの卵ですが…。がんばっていきたいと思っています。父母が生きていたら、何より驚いて、そして喜んでくれることと思います。

 


生田洋子
愛知県瀬戸市出身 横浜市在住。 現在、フリーのガーデナー見習い中 。
趣味は、京都や鎌倉の散策と、アンティーク雑貨屋さん巡り、
福島、軽井沢への温泉旅行。 好きな動物は、ネコ、犬。

 編集長コラム  今月の~ingな人

かくして香りは記憶を呼び起こす

夏の終わりのある日、私は仕事で八ヶ岳にあるハーブ農園を訪ねていました。木組みの素朴なゲートをくぐって、一歩農園に入った瞬間――。

ふんわりとした、やさしい香りに包まれたのです。里山のとても静かな、オレンジの日差しがどこか寂しげな、夏の夕暮れ。時が止まったような景色の中で、大地のエネルギーを受けて育ったハーブたちが、ふわりふわりと風に揺れていました。ここは天国だ。喜びで胸がいっぱいになりました。

もう5、6年も前の出来事です。その頃私は、さまざまなプレッシャーに負けて、心も体も疲れきっていました。かなりいじけた人間になっていたと思います。そんな私を農園の植物と農園主の女性は、何も言わず迎え入れてくれました。それだけなのに、私は心の傷がいやされていくのを感じたのです。この時の経験が、私のその後の道を決めました。

今でもはっきりと、あの夏の夕暮れ時の光と音、そして香りを覚えています。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚――。五感を通して記憶が呼び起こされた経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。なかでも嗅覚は、記憶と直結しているといわれます。

香りは目に見えませんが、「におい物質」として存在しています。ふわふわと空気中に漂っているのです。 におい物質は鼻から入り、鼻の奥にある細胞から神経を通って、脳の「大脳辺縁系」へと伝達されます。そして「おいしそうなにおいだ」とか「危険が迫っている」などと、判断されるのです。

大脳辺縁系は、食欲や性欲など人間の本能を司っています。嗅覚からの情報は、この大脳辺縁系にダイレクトに伝わる。 だから嗅覚は、五感のなかで最も本能に根ざした感覚といわれるのです。

さらに嗅覚の情報は、記憶を司る「海馬」にも伝達されます。ジンチョウゲの香りが恋の思い出を呼び起こすのも、ハーブの香りにいやしを見いだすのも、嗅覚と記憶が結びつくメカニズムがあるからです。

でも、そんな人間の思いなど、植物は気にしてはいないでしょうね。植物が香りを持つのは、受粉を手助けする虫や鳥を呼び寄せたり、逆に害を及ぼす動物や虫を遠ざけたり、病原菌やカビから身を守ったりするため。人間は植物が作った香りを、ちゃっかりいただいているわけです。植物に感謝しなければいけないですね。

 この花束は「タッジー・マッジー」。直径20cmほどの片手で持てる小さな花束で、香りの強いハーブを束ねて作ります。 中世ヨーロッパでは、日曜日の礼拝に疫病除けとして、これを持参しました。まだ町が不衛生だった時代。狭い空間にたくさんの人が集まる教会は、空気も悪かったはず。 昔から人々は、香りの抗菌作用を暮らしの知恵として活用していたのですね。

編集長/奈良貴子
フリーライター、ガーデン・コンダクター インターメディテイト修了

ガーデン仲間によるリレーエッセイ We love Garden

(c)2010-2016 Japan Garden Conductor Association All Rights Reserved.
ガーデン・コンダクター®は、日本ガーデン・コンダクター協会の登録商標です。