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ガーデンエッセイ

講座で学んでいる本当のトコロは…
/ 青木 由紀子

「どうしてこの仕事に付いたの?女性がやっているのはめずらしいわ」住宅街の中で大きなハシゴに昇り、鋸や鋏で枝をズドーンと切っていると、お客様や、通りかかった方によくこのような言葉をかけられます。

どうして?「いやぁ、私も最初は花屋さんになるつもりでいたんですけどね」 都立園芸高校で学び、いざ卒業しようとしたら世の中が 『就職氷河期』真っ只中だったからとか、それで就活して最初に勤めたのがたまたま植木屋だったからとか、理由はいくらでも浮かびました。一度は6年勤めた植木屋を辞め、念願の花屋に勤めた期間も4年ほどあったのですが、やっぱり他の仕事に就こうとは思わず、今のこの仕事に戻ってきてしまいました。

「お花が好きな人に男性も女性もないじゃないですか」
「そうねぇ。好きって大事よね。すてきなお仕事だわ」
思えば植木屋が男性で花屋が女性だなんていつ決まったのか、どちらの業界にも比率の差はあれ、今は男女関係なくなってきています。そんな両方の業種に付いたことのある私ですが、片方の業界にいる時に、「あれ?『向こう側』の知識がないぞ」と思ったものでした。
以前の植木屋にいた時は「お花の事を全然知らない」と思い、花屋にいた時は「お客様がお花とどう暮らしているか知らない」と思いました。

「お花は可愛いと思うけど、難しい事は分からないのよ」
「好きって思ってもらえれば大丈夫ですよ。そうすれば気にかかって、何とかしようと思うじゃないですか」例えばペットを飼うときに、猫だったらエサ皿とかトイレとか、キャットハウスを用意しますよね? それと同じなんです。彼らにも彼らのライフスタイルがあって、陽射しとか風通しとか、それを用意してあげればいいんです。

講座を受講していてまず間違に気が付いたのは、樹だの花だの『向こう側』というものは無いんだ、ということでした。植物たちも人間と同様、この地球上に共に暮らしている仲間で、ちょっとライフスタイルが違うだけ。花なんて別に人間の為に咲かしている訳じゃないし、紅葉・落葉・新緑だってそうなのでした。 彼らは自由気ままにそれぞれのライフスタイルを満喫しています。好きな所では「わーい!」と元気いっぱい大きくなり、嫌いな所では「ここイヤッ!」と容赦なく枯れます。

ペットにトイレのしつけをするように、庭にいる彼らにも多少は人間のルールを守ってもらう必要はあるわけで、例えば「お隣には行かないように」とか、「日蔭が濃すぎて足元の他の植物に陽射しが当たらなくなった」とか、他にも色々な理由で、大きくなった樹を切りに行くのが今の私の仕事です。困っているお家がほとんどなので、大抵はズドーンと枝を落としています。でも、もしそんな事をする必要がなかったら? 人間にも植物にもストレスが無く、なおかつかわいいお庭とは? 日常のひと時に、風とサワサワと遊んでいる彼らには本当に癒されます。

お庭を造るための実践的な事を学んでいますが、本当のトコロは植物との付き合い方や可愛いところ、恐ろしいところ、何より『好き!』という気持ちを一番学んでいるんじゃないかと思います。

そんなふうに話していると、思っていることはぐるぐるして、でもいきなり全部話すと、くどくなってしまうかとも思い、、。「そう、ありがとう。頑張ってね」 お話できる時間はほんの少しで、どれだけ求められた問いに答えられていたのか、自信はありませんでしたが、どうか彼女の中でもお花が好きという気持ちがもっと大きくなりますように。


青木 由紀子

東京都在住。 植木職、生花店での勤務経験を経て、現在はガーデン設計の会社で庭木と草花両方のメンテナンスに携わる。ガーデン・コンダクター ジュニア 第4期 受講中。

ガーデン仲間によるリレーエッセイ We love Garden

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